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第46回日本食品照射研究協議会(2010年12月3日)

教育講演および討論会(概要)


討論会・話題提供2       「食品照射をめぐる最近の国内状況」

等々力 節子((独)農研機構 食品総合研究所)


2000年に全日本スパイス協会が食品衛生法で禁止している香辛料の照射を認可する要請をだした。以来、約10年が経過したが、国としてどのような検討状況にあるか理解が難しい。この1年の動きを中心に解説する。

原子力委員会は、2005年の原子力政策大綱において、食品照射についての科学的、合理的取組みを勧告した。そして、食品照射専門部会を立ち上げ、我が国と世界における食品照射の現況を、関係者のヒアリングも交えて調査し、安全性評価については国際的な経緯を見て見通しがあること、業界にも香辛料に対して利用のニーズのあることを盛り込んだ報告書をまとめた。2006年10月に、原子力委員会は報告書の内容を尊重し、食品安全行政にたいし、食品照射のリスク評価やリスク管理に必要な取組みを行うよう勧告した。以来、定期的に関係省庁の動きをフォローしている。

厚生労働省では、2006年12 月に薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において、食品安全行政の観点から食品への放射線照射について検討することが了承された。その後、2007年6月に食品規格部会で報告事項として議題に挙げられ、(1)リスク評価に必要な科学的知見(2)食品(特に香辛料)へのニーズ(3)消費者の受容性等の3点について外部委託調査を実施することとされた。その調査結果が2010年5月の食品規格部会に報告された。今後の取組みとして、アルキルシクロブタノン類の毒性について科学的知見が不足しているので、関係者に収集努力を要請すること。また、香辛料への照射については業界の一部のニーズがあるものの、導入には消費者の理解が前提となると業界が認識していること、消費者理解は進んでいないことから引き続き原子力委員会に国民との相互理解を一層進めるためのさらなる取組みを要請することが了承された。

食品安全委員会は、2003年度と2004年度に海外状況の調査と健全性文献の調査を行っている。また、昨年までに2回、委員会自らが海外の危害情報や食品安全モニターなどの情報に基づいて実施する評価案件(自ら評価案件)候補として検討されたが、照射ばれいしょには健康被害の報告がないこと、その他の具体的な品目においては、リスク管理機関の要請に基づくものとして取り上げられていない。本年も自ら評価案件候補として、企画専門調査会での候補に取り上げられており、3月の委員会までには最終決定がなされるであろう。情報収集だけは、継続的に実施するものとしており、2007年9月にはWHOの専門家を招へいしての意見交換会が開催された。

現在、合法的に販売されている照射ばれいしょも含め、食品照射について消費者が理解しやすい形での情報提供が食品安全行政のサイト等にほとんど見当たらない。(例外的に農水省のHPサイトがあるが、これも通常見つけにくい)。食品照射研究協議会では、過去の国・内外の安全性評価の経緯や評価内容アルキルシクロブタノンについて、できるだけオリジナル情報の所在を明らかにしながら情報提供を行えるようHPを改定した。