第49回大会 教育講演会
平成25(2013)年11月29日(金) アルカディア市ヶ谷(私学会館)
食品照射の国際的な状況
等々力節子 ((独)農研機構 食品総合研究所)
食品の商業規模での照射は、香辛料の殺菌や農産物の植物検疫処理、畜肉や魚貝類の微生物制御の目的で実施されている。近年の全世界での推定処理量は、年間100万トン程度である。WTOの協定の一つであるSPS協定においては、照射食品についてはコーデックス規格に、放射線照射による植物検疫処理については国際植物防疫条約(IPPC)が定める植物検疫措置に関する国際基準(ISPM)の中に国際的な規格基準が定められている。本講演では、食品照射の国際的評価と諸外国における実用化の動向について解説する。
●資料
植物検疫処理と放射線照射
林 徹 (聖徳大学)
農林水産省は1990年代に、切り花の電子線照射の植物検疫処理としての可能性について試験研究を行った。個々の切り花の電子線(放射線)感受性を明らかにすると共に、電子線を400Gy照射することにより、ハダニ、カイガラムシ、ハマキ、アザミウマ、ヨトウ、アブラムシのいずれもその生育ステージに関係なく不活性化(死滅あるいは不妊化)できることを明らかにした。しかし、植物ウィルスのベクターとなるアブラムシなどを即死できないことが課題として残った。
●資料
Current Status of Food Irradiation in Korea
イ ジュンウン (韓国原子力研究所)
韓国原子力研究所(KAERI)の先端放射線研究所(ARTI)は、韓国で唯一の放射線利用分野の専門研究所であり、世界水準の研究開発成果をあげ、国内の新しい放射線産業の育成を目指している。
現在、食品照射は世界中の約56か国で253を超える食品に使用され、世界における市場は約20億米ドルと見積もられ、毎年増加している。
ARTI-KAERIでは、生体分子に対する放射線の作用を利用し、食糧資源の保存・加工技術の開発や宇宙食や病人食のような特殊な用途の食品を開発している。これまでに、6種類の宇宙食メニュー(ブルコギ、牛肉(味付け焼き肉)、キムチ、発酵野菜、海草スープ、クワ飲料)を開発し、認証を受けている。また、放射線を利用した農産物の輸出入のための植物検疫処理技術の開発についても取り組んでいる。
※当日は会場ロビーにて、韓国原子力研究所の研究開発に関する紹介として、韓国の食品照射の歴史と現状、放射線を利用した韓国産農産物の輸出状況、放射線を利用した宇宙食と非常食の開発等についてのパネルが展示されました。また、キムチ、プルコギ、ラーメン等の宇宙食、ビビンバ、プルコギ、チョコレート等の災害用非常食の見本品が展示されました。
●KAERIパンフレット
香辛料への放射線照射の効果や影響
飯塚友子 (食のコミュニケーション円卓会議)
2-アルキルシクロブタノンを指標とした食品の照射履歴の簡易分析法の検討
北川陽子 (大阪府立公衆衛生研究所)
照射大豆に誘導されるラジカルの緩和時間による解析
岸田敬吾 (北海道教育大学)
照射食品の検知:TL法の線量評価における課題
関口正之 ((地独)東京都立産業技術研究センター)
照射食品の検知:アルカリ処理のTL法及びESR法へ応用
関口正之 ((地独)東京都立産業技術研究センター)
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